恋・愛至上命令。
「親父と幸生さんは、もう少ししたら戻りますよ」

「幸生もいるの?」

珍しい。視線を傾げると多紀さんは髪の無い頭を掻く。

「たまには家族全員でメシでもって、親父が言ったもんでね」

「ふーん・・・。お母さんは?」

「姐さんは今日は歌舞伎を観に。時間までには帰るそうなんで」

お母さんの趣味は観劇で。歌舞伎だけじゃなくて、ミュージカルやら宝塚やら、都合がつけば出かけてく。その辺はお父さんも黙認だ。

「それまでは、・・・大島」

「承知しました」

チラっと一瞥した多紀さんに目礼した凪は、向き直ると「お嬢さんは部屋で休んでてください」と、わたしを促した。
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