恋・愛至上命令。
わたしのだから。
・・・・・・その後にどう続けるつもりだったか、咄嗟で分かるはずも無く。
自分に一番戸惑って目を逸らす。

まるで小っちゃな子供が独占欲を主張してるみたいじゃない。なに言ってるのよ、もう・・・! 分からない、凪の背中を見てたら無性に。

わたしの云うことを聴いて。わたしを拒まないで。わたしから離れないで。わたしを愛して。

そんな思いが一気に喉元にせり上がって。・・・弾けた。
胸の奥底にはまだ何かが蠢いてる。それを上からどうにか圧し込めて、堪える。

「・・・・・・なんでもない。ごめん、行っていいから・・・っ」

クッションに顔を埋めるようにして平静を装った。きっとすごい情けないことになってる。凪にこんな顔見せたくない。

「・・・時間になったら迎えに来ます」

少しの沈黙のあと、変わらない低く透る声が聴こえた。

ドアに向かってく足音が一度止んで。
いいから、早く行って・・・!
たまらなくて心の中で叫んでた。

「・・・・・・私はずっと瀬里お嬢のものです」

呟きが耳に届いた時、思わず顔を上げたけど。
ドアは静かに締まった後で、凪の姿もそこには無かった。

心臓がきゅっとなった。苦しくて、切なくて。ただ・・・痛かった。
そうじゃないったら、凪。わたしが訊きたかったのは。


そんなのじゃ、・・・ないの。




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