恋・愛至上命令。
櫻秀会の一ツ橋、というのは耳にした記憶がある。前に幸生が言ってたような。この若さで幹部なら実力も相当かも知れない。だとしても。

ただの俺として見て欲しかった。・・・彼はそう言ってた。だから。

「晶さんは晶さんです。・・・わたしにとっては」

陳腐な言い回しでもそれ以外、言葉も探せない。伝わったかと目を合わせれば。きつく抱きすくめられて、耳許に「・・・ありがとう」と切なそうに囁かれた。 

「・・・そこまでにして瀬里お嬢を離してもらえませんか、高津さん」

突き通すみたいな凪の声に、はっとして。緩んだ腕から抜け出そうとしたら、晶さんにやんわり二の腕を捕まえられた。戸惑うわたしに構わずに、そのままで凪に向かって冷ややかに言い放つ。

「自分のものみたいな言い方をする割りに、本気で奪りに来る気もなさそうだね」

凪は黙って、晶さんを見据え返した。
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