恋・愛至上命令。

「･･････高津晶は、お嬢が思っているような男じゃありませんよ」

抑揚もない声が低く透った。

「･･･櫻秀会にはいくつか派閥があります。一ツ橋は、櫻秀会の地方支部長を務める大きな組織で春日も同じ派閥に属してますが、･･･分家の二の組は近頃、違う派閥とも接触してます。その先鋒に立ってるのが高津です」

凪がこんなに長く喋るのを初めて聴いた気がして。思わずそっちに驚いてしまう。
淡々とした口調で、フロントガラスの先に視線を向けたままの横顔を、食い入るようにわたしは見つめる。

「一年前は違っても、今は何か思惑があるかもしれない以上、見過ごすわけにはいきません。･･･お嬢を守るのは私の役目ですから」

役目。仕事。･･･凪はあくまで義務だと一線を引くように。


『･･･こたえられません』

『瀬里の為に死ねても、愛は受け容れない』


声が重なった。
心臓のどこかで、何かが灼きつく。


千切れる。