君を借りてもいいですか?
Lesson1・・・お互いの事をよく知る事
白石さんと会うことになったのは3日後の金曜日の夜だった。

仕事が終わって図書館を出ると、白石さんが隣接する公園の前で立っていた。

私と一緒に歩いていた先輩はすぐに白石さんを思い出した。

「ねえ〜織田さん本当にあの人と付き合ってるの?」と私にしか聞こえない小さな声で聞いてきた。

「はい」

実は、昨日白石さんから電話があった。

『申し訳ないが、俺たちは偽とは言ってもOKした段階でもう恋人同士だ。もし人に聞かれても堂々としていて欲しい。
勿論誰かに俺のことを聞かれても彼氏だとか恋人だと言ってくれて構わない。俺も栞のことを恋人だと言うから頼むね』

と事前に連絡があったので、ここで中途半端な態度はできないのだ。

でも彼氏と呼べる人なんて随分昔のことでなんだかこそばい。

「栞」

白石さんが手あげて私を呼んだ。

私は先輩に「お先に失礼します」と言って白石さんに駆け寄る。

私ちゃんと彼女っぽくできた?

しかしこんな急に女優さんみたいに役になりきれるわけがない。

きっとすごくひきつった顔しているんだろうな〜と思いながら白石さんの前に立つ。

「すみません、こんなところまで来ていただいて」

深々と頭を下げた。

「お〜い。そこは『待った?』の方がいいと思うよ」

「え?」顔を上げると白石さんはくすくす笑っている。

「これは教育が必要だな」

白石さんの笑顔がなにかを企んでいるような…そんな意地悪さを感じた。

教育って何?
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