君を借りてもいいですか?
「だめだめ。もう一回」

「えー?何がダメなのかわかりません」

「すべてがダメ。まずその敬語!敬語はないって言っただろ?あとは歳も近いんだからさん付けもダメ。湊人って言うのも語尾を上げる気持ちで」

「…湊人?」

「だからなんで疑問形になる?」

やっぱりやめときゃよかった。ただ今自分の甘さを実感中。

車に乗ると白石さんはいきなり「まずは俺の名前を恋人らしく呼べるまで特訓だ!」と早速特訓が始まった。

**********************
「どうぞ入って…」

車の中で延々と名前を呼ぶ練習させられ、合格をもらえぬままたどり着いたのは湊人さんの住むマンション。

御曹司というだけあって住んでるマンションもそれに見合った高層マンション。

大方の予想はついていたから驚くと言うよりも、やっぱりねと納得できた。

そういえば亜矢から

『白石さんクラスの人なら恐らく高層マンションの高層階に住んでるはずよ。それにリビングも私たちの住んでるアパートの延床面積より大きいはずだからちゃんとみて教えてね』と連絡があったが、亜矢のいうとおりで白石さんの部屋は高層階。

もちろん一人暮らし。リビングの大きさと窓の大きさ、そしてテレビもソファも私のアパートと比較するのもおこがましいレベルだった。

おまけに高層階ならではの街を一望できる景色は最高だ。

部屋は掃除も行き届き、余計なものはなく、インテリア雑誌に紹介されてもおかしくない。

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