君を借りてもいいですか?
私達はちょうど目についたオシャレな感じのバーに入った。

土曜日ということもあって店は賑わっている。

テーブル席は既に埋まっていたのでカウンターに座る。そして私たちは早速ビール注文をし、乾杯した。

「でも栞がこんなとこにいるなんてめずらしいじゃん。何か用事でもあった?」

「高校の時の友人と会ってたの」

私はそこでのやり取りを掻い摘んで亜矢に話した。

「ま〜既婚者に私らの気持ちはなかなか理解できなよね。家庭を持って一人前って古い考えだけは根強いもんね〜」

亜矢と私の考えていることは似ている。

亜矢はバリバリのキャリアウーマンで結婚よりも仕事を優先したい人だ。

唯一私と違うのはその美貌だ。スタイルが良くておしゃれでそして凄くモテるし男に不自由していない。

「誰に何を言われようが自分の人生なんだから、思うように生きるのが一番」

「そうだね」

近くに同じ考えを持つ友達がいるというのは本当に心強い。

「ってことで改めて乾杯しますか?」

亜矢がグラスを持ったので私も持ち、乾杯をしようとしたその時だった。

電話が鳴った。

亜矢は、こんな時に誰よ!と不機嫌そうにスマホを取り出し、画面を見て露骨に嫌な顔をした。

「ごめん。会社から。ちょっと待ってて」

亜矢は席を立つと出入り口方へと向かった。
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