君を借りてもいいですか?
イケメンは観賞用で十分です
「すみません」

謝りながら横になった紙袋を元に戻そうとすると有名な結婚式場の名前に目が止まった。

「ああ!いいよ。俺がこんなところに置いたのがいけないんだから」

男性は椅子から立ち上がった。

そして目が合った瞬間、私の動きが止まった。

結婚式帰りであろう男性はビシッとフォーマルスーツを着こなす同世代ぐらいの男性だった。

でもそれだけではない。久しぶりに見るイケメンだ。

流れるようなサラサラの髪の毛とそれにぴったりな逆三角形のシャープな顔立ち。

キリリとした眉とくっきり二重で目尻が少し垂れた目は色っぽく、形の良い鼻と薄い下唇。

全てのバランスがパーフェクトだった。

テレビや映画ではイケメンは当たり前だが実生活の上でイケメンにあう確率はかなり低い。

そんな中で人気俳優に引けを取らないイケメンと遭遇するなんて奇跡に近い。

「いえ、こちらこそ気がつきませんで……」

さっと元に戻し、一礼するとお手洗いへと向かった。

なんか次元が違うぞ!あんなに顔が小さくて超がつくほどのイケメンは私の知る限り見たことがない。

だけどああいう男性は遠くでかっこいいな〜って見てるだけで満足なのだ。

今日はいい目の保養になった。と思いながら席に戻った。

そしてビールを一口飲んでグラスを置いて私は思った。

鑑賞する分にはいいが真横というのは近すぎて逆に緊張してしまう。

落ち着かないのでこれを飲んだら帰ろう。私は残りのビールを一気に飲み干した。

そしてバッグを持ち席を立とうとした。その時だった。

「すみません」

隣のイケメンに声をかけられた。
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