突然婚⁉︎ 〜きみの夫になってあげます〜

暗闇の中で、原さんのウェリントンの眼鏡のレンズがぎらっ、と光った。
寒気を帯びた恐怖が足元から、ぞぞわっと、上がってくる気がした。

だけど、大きな声を出せばきっと、隣の山田のおばちゃんが「何事か⁉︎」と飛び出てくるはずだ。

「井筒さん、結婚したって言ってましたが……」

……なのに、喉が強張(こわば)って、声が出ない。

「あの人と……離婚してくれませんか?」

……はい?

わたしは呆気にとられて、思わず間の抜けた顔になる。

< 120 / 272 >

この作品をシェア

pagetop