きみの左手薬指に 〜きみの夫になってあげます〜
「シンちゃん……弟さんの奥さんって、確か大橋コーポレーションの社長令嬢だってね?
……わたしには、そんな強力な後ろ盾どころか、天涯孤独でなにもないのよ?」
あてにはならないが、原さんの「情報」だ。
「櫻子はそんなことを気にしてるの?
『後ろ盾』なんて僕にはいらないよ。
むしろ、下手に経営に口を出してくる閨閥なんて、邪魔なくらいだよ。
……それに、謙二と誓子さんはよく誤解されるんだけど、そういうんじゃないんだよ」
シンちゃんは呆れたように言った。
だけど……シンちゃんの義妹が大橋コーポレーションの社長令嬢というのは、ガセじゃなかったか。ちょっと……がっかりする。
それから、シンちゃんは弟夫婦の馴れ初めを教えてくれた。
彼らは互いに二十代の頃「お見合い」をして、政略結婚しそうになったことがあったそうだ。
ところが、謙二さんが学生時代に立ち上げた会社が軌道に乗る前で、大橋側から信用が得られず断られたそうだ。
彼らが今夫婦として一緒にいるのは、その後に再会し、ちゃんと「恋愛」しての結果だということである。
実は二人とも、初めてのお見合いで出会った相手をずっと忘れられずにいたらしい。
……うるわしき純愛である。
だが、しかし……
「で…でも、わたし、そんな『お嬢さま』と、うまくやっていく自信がないし……」
やっぱり、尻込みしてしまう。
わたしはああいう町の育ちだし、根っからのど庶民なのだ。