きみの左手薬指に 〜きみの夫になってあげます〜
「櫻子……きみも、謙二や大貴のように、僕を見捨てるの?」
シンちゃんのわたしを抱きしめる腕に力が篭る。
「……シンちゃん?」
「謙二も、従弟の大貴も、僕と一緒に萬年堂を背負うために入社してくれるとばかり思っていたけど。結局……僕を見捨てて、新しい会社を興してしまった」
シンちゃんの声が、くぐもっていた。
「……弟さんと従弟さんはそうだったかもしれないけど、シンちゃんには青井さんがいるじゃない?青井さんは謙二さんの『親友』なんでしょ?
なのに、めんどくさそうなシンちゃんについて、秘書をやってくれてるじゃない?」
わたしは必死で言った。
よくは知らないけれど、なんとなく謙二さんだって、「親友」にこそ傍にいてほしかったんじゃないかな、と思ったからだ。
「確かに青井は、学生時代は謙二の手伝いをしてたのに『あんまり「社長」に対してズケズケとモノ言える間柄も、ほかの社員の手前、却ってよくないから』と言って、僕の方について来てくれたけど……」
そうでしょう?
所詮……お互い「ないものねだり」なのよ。
「だけど……」