きみの左手薬指に 〜きみの夫になってあげます〜

……今だ、と思った。

これまでのように、グズグズはしていられない。

「さくらこ」さんが危機に瀕しているこの瞬間を、看過ごすわけにはいかない。

彼女と出会うきっかけさえ掴めれば、今は最前線から離れているとはいえ、僕だって営業畑で育った「営業マン」の端くれだ。

絶対に、彼女から「成約」を勝ち取ってみせる。

でも……いきなり今の「身分」を明かすのはやめておこう。

「さくらこ」さんには僕自身を「(株)萬年堂の専務取締役」ではない、

……「葛城 慎一」を見てほしいから。

< 269 / 272 >

この作品をシェア

pagetop