きみの左手薬指に 〜きみの夫になってあげます〜
……今だ、と思った。
これまでのように、グズグズはしていられない。
「さくらこ」さんが危機に瀕しているこの瞬間を、看過ごすわけにはいかない。
彼女と出会うきっかけさえ掴めれば、今は最前線から離れているとはいえ、僕だって営業畑で育った「営業マン」の端くれだ。
絶対に、彼女から「成約」を勝ち取ってみせる。
でも……いきなり今の「身分」を明かすのはやめておこう。
「さくらこ」さんには僕自身を「(株)萬年堂の専務取締役」ではない、
……「葛城 慎一」を見てほしいから。