きみの左手薬指に 〜きみの夫になってあげます〜
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「……なんですか、そのノロケ話?
もしかして、彼氏のいないあたしに対するアテツケですか?」

二人並んでカウンター業務をしていた昼下がり、真生(まき)ちゃんがじとっ、とした目でわたしを見る。

「なんで『シンちゃん』がそんな『寸止め』をするのかは、あたしには皆目わかりませんけど、ご近所さんに『祝福』されて、櫻子さんも幸せな『同棲生活』が送れてるんだから、いいじゃないですかぁー」

「のっ…ノロケ話って……それに、すっ…『寸止め』って……まるで、わたしがその先を期待してるみたいじゃないっ。
そもそも、同棲生活じゃないわよっ。
シェアハウス(仮)での『同居生活』っ!」

わたしは息だけで怒鳴った。
一応、ここが図書館だからだ。

「はいはい、そういうことにしときましょ。
……で、あれからストーカーの動きは?」

真生ちゃんが一転して、スナイパーのような鋭い目で訊く。

「うん、今は彼に車で送ってもらってるし、電話のケーブルは引っこ抜いたまんまだし、なんにもないよ」

すると、真生ちゃんが「よかったですー」とホッとした顔になる。

口の悪さと突拍子もない発想はさておいて、彼女はやっぱり、すこぶるやさしくていい子だ。

「感謝してくださいよぅー。
このあたしが、あの『イケメンさん』の『シンちゃん』から早々と手を引いたからこそ、櫻子さんのモノになったんですからねっ」

……いやいやいや。
せっかく褒めてあげた「前言」を撤回するわよ?

「葛城さん」が三十七歳だと知ったその日。

二十五歳の真生ちゃんは、
『たとえどんなにハイスペックだとしても、
一回り上はないわー』
と、(のたま)っていたからだ。

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