今日も今日とて、告りますのでご覚悟を。
昌也が水瀬さんに渡そうとしている名刺を慌てて奪い取る。
水瀬さんがオカマバーに行ったらねぇ、格好の餌食になるに決まってるでしょ。私、これ以上ライバル増やしたくないんですけど!
「あの、今日はありがとうございました」
「あぁ」
「おやすみなさい」
「うん」
うんって……。
水瀬さんらしくない返事をして車に乗り込む彼は、開けていた窓脇に肘を掛け、何か言いたげな顔をした。けれど、それは一瞬で、エンジンが掛かる。重低音の後に光る青白いライト。
滑るように走り出した車を見送り、エンジンの音も聞こえなくなった頃、目が合った昌也に頭を撫で繰り回された。
「いつの間に水瀬とそういう仲になったのよ!」
「ちょっと、違うよ。誤解。送ってもらっただけ」
「そうなの? でもなんか親密な雰囲気だったわよ。水瀬ったら、紗夜のことをじーと熱い目で見つめちゃって!」
「熱い目? まさかぁ」
否定した私に、昌也はノンノンと顔の前で人差し指を振る。
「私はね、職業柄、色んな人を見ているから分かるのよ。水瀬のあの目は紗夜のことを意識してる目。一歩踏み出したいけどできなくて戸惑っている目よ。やったじゃない」
そ、そうかなぁ。
確かに前よりは気にかけてくれるようになったと思うけど、多分それは部下としてだし。特別な枠に入れてもらえたようには感じ無いけど。
でももし、昌也の言う通りだったら……。
空を見上げると綺麗な三日月が浮かんでいる。
星に願いを、じゃないけれど、どうかどうか愛しいあの人を。
そう祈った夜から3日後、信じられないような出来事が起こった。