王子様とブーランジェール

だから、俺が守ってやるんだよ











「…何で、こんなことになってるんだ!」



ナイトハイクという、気持ち悪いコースの肝試し的なものを開催中。

桃李の尋常じゃない悲鳴と、大きな音がした。

駆けつけてみると、そこには松嶋しかおらず。

桃李は…絶壁の下へと落ちていった。

と、いうことだ。



何でだ?!



「嘘っ…」

事の重大さを知ったのか、柳川も口元を押さえて、青ざめていた。



しかし、この男は。


「すっげぇ、芸術的に落ちていったで?ゴロゴロゴローッ!と。ローリングサンダー!みたいな?」


この野郎っ…!

事の重大さが、わかってないのか?

こんな時にもふざけやがって!


「だから!何があったんだよ!何でこんなことになってんだよ!」

「いやぁー…あまりにも、怖がって怖がってのたうち回るもんだから、一発強く抱き締めた…」

「あぁ?!」

「…じゃなくて!じゃなくて。あまりにもガクブルなもんだから、ちょっと和ませてやろうと、冗談を言ったのよ」

「冗談?」

「そそ。『あぁーっ!竜堂のダンナ、柳川とチューしておっぱい揉んでるわ!』ってさ」

「はあぁぁっ?!」

「ちょっと!松っつん!」

「で、ホントに揉んでないか確認しようと、ちょっと先に行ってしまって、目を離しちゃったワケ。悲鳴がして、振り向いたら丁度足を滑らせていて、ダイビング!していたっつーワケ」

足を滑らせて、落ちたのか。

確かに。地面は少しぬかるんでいる。

桃李がソワソワとのたうち回っていたのだとしたら、滑らせて落ちることもあり得る。



しかし。松嶋よ。

何、ガセネタを吹き込んでいるんだ。

ガセネタでも、桃李の耳には入れたくない話なんだけど。

こんな気持ち悪い場所で、おっぱい揉んでるわ?冗談じゃねえぞ!

俺、そんなに節操の無い野郎じゃない!




今一度、桃李の落ちたと思われる絶壁を見下ろす。

ホントの断崖絶壁ではない。

笹藪と大木と、地面は土だ。あと、流木や、落ちた枝。

落ちた、というよりかは、キツイ傾斜の坂をゴロゴロ転がっていった、というイメージだと思われる。

しかし、ゴロゴロ転がって落ちていったとはいえ、打ち所が悪ければ、最悪の事態だ。



(桃李…)



何で、こんなことになってんだよ。

絶壁から落ちるって、想像したか?



俺が近くにいながら…!



< 104 / 948 >

この作品をシェア

pagetop