王子様とブーランジェール




こんの…松嶋っ!

再度、物申してやろうかと、カッとなったが。




『頑張ってるのにさ、何で応援してやらないの?』




あの時の松嶋のセリフが、頭に過る。




お、応援とか何とかの前に。

現実問題ってのがあって…。

それに、桃李は昨日からペナルティ入部で毎晩遅いんだぞ?

ダンスの練習なんてする暇あるのか?




すると、噂の人物が登校してきた。



「あ、桃李、おはよー」

「…あれ?今日は遅刻しなかったね?」




遅刻をしていないにも関わらず、ヤツはなぜかどんよりしていた。

いや、どんよりの理由はわかる。



「こ、今後一切遅刻は厳禁となりました…」



やはり。

昨日の疲労がたまっているようだ。

何時まであそこにいたんだ?

で、昨日だけじゃないんだぞ。

恐らく今日も…。



「桃李、おはよー!昨日送った動画見た?」

柳川が桃李に話し掛けている。

この二人、最近急に仲良くなったな。

「ゆうみちゃん、おはよ…動画見たよ…」

「…桃李、疲れてない?どしたの?」

そこへ、松嶋が加わっている。

「ホントにのー?遅刻しないで疲れてしまうのなら、遅刻してしまえ!桃李は遅刻してなんぼだにゃ」

「ちょっと慎吾」

「遅刻は厳禁となりました…あ、松嶋」

「ん?」

「は、話あるの…」



桃李がどんよりしながら、うつむいて話をする。

その内容は、やはり、ペナルティ入部のことだった。



「へぇー。ペナルティ入部、ホントにあったんだ」

柳川はなぜか感心している。

「あの糸田のハゲと、ずっと一緒にいるのか?いつかセクハラされてまうで?」

「セクハラ?…ずっと怒鳴られっぱなしだよぉ…糸田先生恐い…」

更にずーんと落ち込んでいる。

松嶋は「可哀想にのー?」と、桃李の頭を撫でている。

このっ…触りやがって!

「でも、部活に2週間毎日かぁ…ダンスの練習もあるのにねー」

「…あ、その事なんだけど…」

桃李は顔を上げて、松嶋を見る。

「…ん?何だ?」

「…あの、あのね…」

しかし、すぐに目を逸らしてうつむいたり。

パッと顔を上げて、何かを言いかけたり…何だか、もじもじしているようだ。

言いたいことをうまく言えないタチだからな?



何だ何だ。

何を言いたいんだ。

ダンスの話であることは、間違いない。

まさか、いつものように『嫌だぁぁ!もうやめるうぅぅーっ!』ってか?

だが、それも今回は仕方ない。

ペナルティ入部の仕事内容もかなりのものだぞ?夜遅くまで…。

それを両立?

いやいや。桃李には絶対無理だな。



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