王子様とブーランジェール
「あぁぁっ!本当に咲哉が死ぬってぇぇっ!わかった!わかった!夏輝が怒ってることはもうわかったから!落ち着け!なぁ?!」
「…何が、なーにーが!わかったっていうんだぁっ!桃李の名前の由来かぁ?!…あいつの母さんが桃と李を食いまくった時に産気付いたから桃李って名前になったんだよこのバカ野郎があぁぁっ!!」
「…え?あ?あ、うん…じゃなくて!わかった!わかった!神田は夏輝のモノだから!うん、そうだ!な?な?だから…」
「…うるっせえな!あいにくアイツは俺のモノじゃねえんだよ!テキトーなことばかり言いやがって、何がわかってんのかってこのクソがあぁぁっ!!」
「あ、そうなの…い、いやいや!もういい加減、咲哉を離してやってくれってえぇぇっ!!」
あぁ…もう…。
何に怒ってるのか、サッパリわからなくなってきた…。
いったい何がしたいんだ、俺…。
だが、一度出した刃は引っ込めることが出来ず。
「…殺す!…殺してやる!上等じゃねえか!全員、皆殺しだあぁぁっ!!」
「や、ヤバっ!マジでっ?!やめてくれぇぇーっ!夏輝いぃっ!」
恐らく、誰かを殺すまで、怒りを止められない!
「…うおおぉーっ!ダンナ、何やってんの!」
「陣太、どいて」
松嶋に…理人か?
しかし。姿を確認する間もなく。
「…ぐあぁっ!!」
背中に、重く鋭い痛みが走る。
ドガッ!と音をたてて。
それは、裏側の腹まで衝撃が伝わっており、昼に食べたモノが出そうな程。
その衝撃で、咲哉から手を離す。
そこらにあった机をなぎ倒して、共に地に倒れ込んだ。
痛ってぇ…。
背中を殴られた。
何か重いもので、おもいっきり殴られた。
背中の痛みは相当で、しばらく起き上がれない。
糸田先生のタイキックより、何倍も痛い…!
痛い…痛ってぇ!
「夏輝、御乱心もいい加減にしろよ!」
御乱心…そうですか。
でも、ようやく怒りの支配から解き放たれたような気がする。
背中の痛みに悶えながら、顔を上げると。
そこには、椅子を片手に、理人が立っていた。
あ、あぁ…椅子ね。
それを振り回したワケ…。
「夏輝、座れ。説教だ!」
あぁ、はい…えぇ…。