王子様とブーランジェール



何で急に桃李に…?



「竜堂くん…ひょっとして、前に言っていた好きな女の子って…あの子?」



その敵意剥き出しの表情のまま、俺をじっと見ている。

これは…。



「…俺が誰を好きだろうが、あなたには関係のないことですが?…っていうか、もう教室来んなっつったろが!」

「もしそうなら、許さない!」

「はぁっ?!」

「…許さないんだからね!」



そう喚き散らして、彼女はさっさと立ち去っていった。

背中に怒りのオーラを背負いながら。



…いったい何なんだ。

急に現れたと思ったら、急に怒って、急に帰りやがった。

よくわからない女だな。



しかし…。



『あれ…どういうことなの…?』

『答えなさいよ!!』



…何だぁ?



桃李…何をした?



すると、一度閉めたドアが、再び開いた。

そこには、桃李が。



「彼女さん…帰ったの?」



(………)



今、何て言った?




「っていうか、彼女じゃねえし!」

「あ、そうなの…?」



おまえ、バカ?

まだ勘違いしていたのか?!

嘘だろ…?!



「別れてたの?」

「付き合ってもいねえし!」

「え…そうなの?」

「俺、ただ追い回されてるだけ!」




とんでもない事実がここで発覚してしまった。

俺と嵐さん、付き合ってると思ってたワケ?

泣けてくるわ…。

約1ヵ月も勘違いしてたっていうのか。

桃李…おまえ、ガチでバカだよ。

ガチバカだよ…。



急に一気に落ち込みモードになった。



…とも、言ってられない。この非常事態。

確認しておかねぱならないことがある。



「…桃李」

「…あ、はい」

「おまえ…嵐さんと何かあった?」

「あらしさん?」

「今の人」

「あ…みおさん?いや何も…この間、蜂谷センパイとクレープ食べてた時、バッタリと会っただけ…」

「…何か怒られるようなことしたのか?」

「な、な、ない!…ないよ!初めから怒っている感じだったけど…何もしてないはず…」

そう言って、桃李はしゅんとする。

確かに…でもコイツ、無意識に何かやらかしてるかもな。

とりあえず、注意しておかないと。



「な、な、夏輝…ど、ど、どうしよ…怒ってるの…」

「…大丈夫だ」

「だ、だ、だ、大丈夫かな…」



不安そうにうつむく桃李。

その頭に、ポンと手を置いた。



「…大丈夫だ」



俺が守ってやるから。

心配すんな。




…だなんて、ああぁぁ。

カッコつけたことを思ってしまった。




だが。

この件の詳細を知ることになるのは、だいぶ後の話となる。




とりあえず今は。

胸キュンだらけのラブラブライフを夢見て(?)、純情ラブストーリーは、続行中。







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