王子様とブーランジェール



身を隠しながら、スマホを取り出す。

そして、隠れたままその模様を撮影しまくった。

少しでも、一枚でも多く撮れ。

…そうすれば、夏輝が何とかしてくれるかもしれない。なんて。



しかし、フラッシュを焚いているので、割りと早くバレる。



『…あぁ?何だおまえ!…何撮ってんだコラァ!』



田仲をボコボコ殴っていたヤツがこっちに気付き、やってくる。

や、やべっ!



しかし、この梶咲哉という男は、機転が利いた。

途端にカメラを動画に切り替える。

そして、後退りをしながら撮影しながら、メインストリートの方に向かって叫びだした。



『…誰か!誰かぁーっ!おまわりさぁーん!カツアゲですぅーっ!ボコボコですぅーっ!誰か来てくださあぁーいっ!!』

『…てめえ!』

『咲哉!』



胸ぐらを掴まれ、顔面一発殴られ、突き飛ばされる。



しかし、その呼び掛けが利いたのか、自転車に乗っていたおじいちゃんがその場に立ち止まり。

たまたま通りすがった車もその場に一時停止した。



『ちっ…ハケるぞ!』

『…これ、ミスターに渡しとけ!あのスケこましヤロー、出てこいやってな?!ぶっ殺してやるって言っとけ!』



そう言って、慌ててその二つ折りの紙切れを咲哉に叩き付ける。

騒ぎが大きくなることを予感したのか、不良どもは咲哉と田仲をその場に残し、あっという間に消えていった。



『…田仲!大丈夫か!』



とは、言ったものの。

田仲の顔はもうボッコボコで、流血沙汰となっていた。



『咲哉、ごめん…助けてくれてありがとう』

『そんなことより、おまえ、目は大丈夫なのかって!こんなにボコボコになって!』




そんな田仲を家まで送り、傷の手当てをしてやる。

一旦、帰宅するが。

翌朝、心配で様子を見に行った。

…だから、朝練休んだのか。

一晩経ち、顔が更に腫れて痛々しいため、田仲は本日欠席するとのことだった。








「…とりあえず、LINEでこの写真と動画送るからよ?心当たりないか見といてや」

着替えも終わって、教室で咲哉から昨日の一連の話を聞く。

咲哉は狙われたのではなく、止めに入ったのか…。



だがさっき、教室に辿り着く前にも、男子生徒が一人、俺を待ち構えていた。

やはり、顔やらあちこちボコボコにされた跡がある。

そして、そいつも《ミスター出てこいや!》と書かれた二つ折りの紙切れを俺に渡してきた。



また…!



< 478 / 948 >

この作品をシェア

pagetop