王子様とブーランジェール

追憶の味の苦いこと









犯人探しに向けて、一気に事が進んだように思える。



『じゃあ、その情報収集とパトロールの結果を随時報告頼むよ?その結果次第でこっちからの反撃を考える。遅くても明後日の木曜日までにはもう一回集まるから』

「木曜日?随分と急かしますね?」

菜月のストレートな感想に、顧問は『ははっ』と爽やかに短く笑っている。

『遅くても金曜日にはケリをつけたい。俺、来週から単位試験なんだよ。そうなると相手出来なくなっちゃうから』

「試験。大学生も大変ですね」




襲撃事件に関する情報を集め、更なる聞き込みを重ねて検討した結果、犯人像が浮かび上がってきた。

そして、相手を更に絞り込むために、更に情報収集を行い、平行して残党女子たちがパトロールを始めることとなる。




『夏輝』

「…ん?」

『とりあえず木曜日までは、みんなに任せておとなしくしてること。いいね?』

「………」

今一度、念を押された。




『では、健闘を祈る。先代ミスターの可愛くて悪いデビル達?』




そのセリフを最後に、顧問…酒屋の兄ちゃんの通信は途絶えた。

だが息つく間もなく、話は進められる。



「役割分担だ!まず菜月と美梨也でマヌケ不良連中の着用していた制服から高校を割り出せ。あやつの言っていた通り、暴走族ヤンキーどもの周辺調査も忘れるな!」

「わかりました」

「了解でござい!」

「残りは潤と奈緒美を中心にパトロールの班割りと担当区域を決めて、すぐ動けるように準備しろ!」

「了解!」

「今、まゆりが梅津のところに行っている。戻り次第出陣だ!」

まゆマネ?…あ、そうか。

まゆマネは、夏休みでサッカー部を引退。今はフリーだった。

残党のメンバーなのに、ここにいないから、部活に顔だしているのかと思ってしまった。

外出中なのね…。



「狭山さん!私も混ぜて!」



藤ノ宮だ。

松嶋の隣でじっと話を聞いていたが、そう言いながら残党の輪の中へと入っていく。

え?藤ノ宮がパトロールすんの?

「おう律子。おまえ自分の獲物は持ってきてんのか?」

「家に取りに行くから。私は戦力になるよ?」

藤ノ宮が戦力?どんな戦力だ。



「…狭山さん」

「…あぁ?」



狭山の背後には、いつの間にか松嶋が立っている。

らしくない、神妙な面持ちだ。


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