王子様とブーランジェール



ま、待て!

今のはいったい…と、思ったのも束の間。




おでこにキスしてくるから、悪いんでしょ!




さっきの桃李のセリフがリピートされる。

(え…)

そして、昨日の放課後の教室での出来事を思い出してしまい、頭の中を駆け巡ってしまった。

ギュッと抱き締めて、おでこにキス…。




…ああぁぁっ!!



(ま、待って…)



頭の中が真っ白になった。

桃李に逃げられたその場に立ち尽くしてしまう。

今、いったい何が…。




おでこにキスしてくるから、悪いんでしょ!




…あぁっ!何回もリピートしないで!!




何だそれ。

何だそのかわいさ。

目をうるうるさせて。

ブルブルして、顔を真っ赤にして。

ばか!って…。



かわいすぎる…。




…って。桃李のかわいさを噛み締めている場合ではない。




桃李のあの態度は。

どういうことなんだろうか。

嫌だったのか、良かったのかはよくわからないが。

ひょっとすると。



(意識、されてる…?)




恥ずかしくて、照れてるのか?

それとも、ホントに嫌だったのか。

どっちなんだろうか。



だけど、この状況。

今、その真意を問うべき時なんじゃないのだろうか。



おでこにキスしてくるから、悪いんでしょ!



あぁ、何回もリピートされる…。




ただ、現実として。

今わかることは。



俺、もう止められない。

恥ずかしいとか何とか、攻めると言いながらもその一歩を踏み出そうとしたり、下がったり。

でも、そんなことしてる場合じゃない。



もう、好きで好きで仕方なくて。

想いは止められなくて、溢れそうで。

一度、行動に出してしまったら、止められなくて。



もう、ここまで来たら。

突っ切らなくては、気が済まなくなってきた。










『えっさえっさー!』



えっさえっさー。



『あげあげホイホイ!』



あげあげホイホイ。



『もっともっとー!もーっともっともっと!』



もっともっと…。






軽快なリズムを弾いているメガホンの音が鳴り響いていて。

我が校の全校生徒がほぼ集まっている、大歓声のスタンドの中。

群衆の一人となって、メガホンを持って立っているが。



俺は、さっきの桃李からの奇襲と、昨日のしでかした出来事がぐるぐると頭の中を回っており。

大声、出ない…。




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