王子様とブーランジェール



予鈴も鳴り終わり、人の声も小さくなっていく。

授業をサボるという形になってしまった私が爆ダッシュで向かった場所は。

屋上だった。



…ここなら、誰もいないはず。



この屋上内に、本当に誰もいないのか、おサボりしている人はいないか、辺りを念入りに確認した。

よし、いない。



何故屋上に来たのかというと、単に一人になって考える必要があっただけ。

…これからどうするか。

一人作戦会議をしようと思ったのだ。



屋上のど真ん中に座り込み、体育座りをして、一人考える。




まず…夏輝と話をしなくちゃ。

で、元気を出してもらう。

だけど、その、元気を出してもらうには、何を伝えれば良いか。



夏輝に、私がイジメられたのは夏輝のせいじゃないよって伝える。

…あ。でも、元に夏輝のファンのセンパイにイジメられてるから、説得力ないか。

「やっぱり俺のせいじゃねえか!」と、突っ込まれそう。



じゃあ…。

夏輝に、私はもう大丈夫なんだって伝える。

もうイジメられるようなことがあっても大丈夫。

狭山さんが相手を倒す機械をくれたので、今後もし囲まれるようなことがあったら、これを使うので大丈夫。

だから、もう自分を責めないで、教室に帰って来て下さい。

で、機械見せたら安心するかな。

名案だ。メモしておこう。

カバンからノートと筆箱を取り出して、今思い付いたことをメモする。

おもむろに取り出したノートは、生物のノートであり、『ミトコンドリア』とだけ書いてあったページの隣にその内容をメモする。

ミトコンドリアってなんだっけ…。

…いやいや、余計なことを考えちゃダメ。

後、何を言おうかな。



(………)



そのとき、ふと。

『もう関わるな』

『パンダフルにも行かない』

と、言われたことを思い出した。



言われた時は、どういうことなのか、ピンとこなかった。


だけど、週が明けると…夏輝はいつもみたいに挨拶してくれないし、話し掛けてもくれない。

私も『もう関わるな』と言われた反面、話しかけられずにいた。



夏輝がそう言ってるんだ。

だから、関わらないようにするのがいいんだ。



最初はそう思っていた。



だけど…時が経つに連れて、それは苦しくなってくる。



モノを散らかしても、夏輝は注意してくれない。

ドジって机を倒しても、怒鳴らない。

『だからおまえは…』という、小言もない。

あれから、お店にも一切顔を出さなくなった。



< 763 / 948 >

この作品をシェア

pagetop