王子様とブーランジェール
『最近桃李の様子がおかしかったので、心配になって塾の帰りに寄りました。…里桜はここで何をしてるんですか?』
『わ、私は桃李ちゃんと女子トークをしに…』
『女子トーク?夏輝くんとの気持ち悪い交尾の話が女子トークですか?』
交尾…。
『気持ち悪い?…秋緒ちゃん、ひどいっ!』
『ひどいのはあなたの方じゃありませんか?!』
秋緒が声を張り上げた。
いつも冷静に淡々と喋る秋緒。怒号をあげることはまずない。
私もビックリした。
『さっきから話を聞いていれば、夏輝くんとの気持ち悪い交尾の話ばかりじゃないですか?誰があなたたちの交尾の話を聞きたいと言ったんです?しかもあなたばかりが一方的に聞きたくもないゲスカップルの交尾の話をしてるじゃないですか。桃李がそこで黙って苦しそうにしているのが見えませんか?あなた、白内障ですか?その時点で女子トーク成立していないのわかりませんか?』
早口で、一気に畳み掛けている。
里桜ちゃんは、秋緒の言ったことを全部聞き取れていないのか、理解出来ていないのか、何も言えずに口をあわあわとさせている。
そこへ、また一層秋緒の口撃が襲いかかる。
『このゲスカップル、うちでも淫らな声や物音をよくも立ててくれましたね?こっちは受験勉強に必死だというのに、あなたがたゲスカップルのおかげで少しばかりかイライラさせられたじゃないですか。シャープペンの芯5㎜折りました。あなたがたゲスカップルに、私の受験勉強の邪魔をする権利あるんですか?…え?権利?ゲスカップルに世界中全ての何の権利もありませんよ?生きる権利すら剥奪したいところなんですが?』
『げ、ゲスゲスひどいよーっ!秋緒ちゃん!』
『…お黙りなさいぃっ!このゲスカップル女の方!』
秋緒が、再び声を張り上げた。
さっきよりも、一層の怒号だ。
『…里桜。私はあなたが大嫌いです』
里桜ちゃんを見る秋緒の目は、氷のように冷たい。
いつもポーカーフェイスの秋緒。
だけど、今だけは、その冷たい瞳から憎悪が滲み出ているようだ。
『…自分の主張を一方的に押し付け、人の話は聞かない。頭が悪いので、こっちが話しても理解が出来ない。…まあ、人の話を聞かないからなんでしょうけど』
『あ、あ…』
里桜ちゃんは何かを言いたそうだ。
でも、秋緒の迫力に言葉が出てこない。