王子様とブーランジェール
大人との会話にも萎縮せず、友達との会話みたいに自分の話したいことを遠慮せずにハキハキと話す。
こういうところ、尊敬しちゃうな。
『今年も祭り終わったらテントの片付けしますから!』
『なぁーに。片付け手伝わなくていいって!友達と遊んでゆっくりしてけ?ね?桃李ちゃん』
『あ、はい…』
そう言って、小林さんは作業に戻る。
『………』
小林さんが去った後、夏輝と二人きりになってしまった。
しばし、沈黙が訪れてしまう。
『…あ、な、何にする?』
沈黙はツライし、話し込むのも気が引けるので、接客を行う。
『…あ、そうだ』
そう言って、思い出したように向こうは千円札を二枚出した。
『門脇部長に、いつもの酒と焼き鳥テキトーに買ってこいって言われたんだけど。俺の分もこれで買えるだけ買っていいって』
奥のテーブル席では、お寿司屋さんの門脇さんがこっちに向かって手を振っている。
サッカー少年団の部長もやっており、夏輝とも知り合いだ。奢ってもらうんだね。
『門脇さん…あ、焼酎の水割りね。あと焼き鳥何本か…夏輝は何がいい?』
『お茶と焼きそばと…あと何あんの』
夏輝は売り場テントの上にぶら下がっているメニューの短冊をじっと見ている。
『焼きイカ美味しいよ?今年、私がタレ作ったの』
『ふーん…じゃ、それ』
そう言って、私に二千円を渡す。
『じゃあ、あと門脇さんの好きそうなもの…じゃがバターかな』
『…は?わかんの?』
頷きながら、お金を金庫にしまう。
『じゃあ持ってってあげるから、門脇さんと座ってて?』
『あ、俺持ってくからいいって!そんな大量の食べ物、おまえひっくり返すだろ!』
学校でのドジなイメージがあるんだろうか。
仕方ないな…。
会計を済ませたのに、夏輝はそこから動かない。
『いいのいいの。座ってて』
『でも…』
無視して、注文を準備していると、夏輝はそのうち門脇さんのいるテーブルへと戻っていた。
それから、門脇さんの水割りとお茶に焼きそば焼きイカ、焼き鳥5本にじゃがバターを大きめのトレイに乗せて持っていく。
『…ほら、渡したのか?』
『あ、いや…』
『ったく、根性ねえな!優勝した時の粘りを見せろ!』
少し離れたテーブルに二人は座って談笑していた。楽しそう。
『お待たせしました』
『桃李ちゃん!悪いねー?ま、座りなさい座りなさい』