先生。


「私はまだ何も…」


「嫌ならとっくに断ってんだろ」





その言葉に、何にも言い返すことはできなかった。



先生は吸っていたタバコを、ポケット灰皿に押し付けて屋上を出て行く。


私の横を通り過ぎた時、大嫌いなタバコの臭いがした。



その臭いが、いつまでたっても離れてくれない。













「遅いなー…」





あの後連絡先も交換して、今は学校近くの空き地で先生を待っている。


…て、結局ここにいる私ってなんなんだろう。



まだ期待してたりするのかな。


助けてくれる大人にすがろうとしてるのかな。



…それで、今まで散々傷付いてきたのに。





「帰ろっかな…」





やっぱりそう思って帰ろうとしたら、黒い車が空き地に入って来た。


先生って、色々顔に似合わない。





「乗って」





運転席から顔だけ出して、先生はそう言う。

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