恋する剣士
それは、明を守る為についた傷だった


ーーー昴がいたら、こんな怪我しなかったな



左の肩をマジマジと見る

すぅと息を吸い、口に布を咥えた


力の限り矢を引っ張る
予想以上の痛みに目を閉じる


「ううううっ」



びしゃっ




矢が抜けた後、明は目を見開いた



ドクドクと血が溢れる






ーーー 紅葉みたい… 





床を染める血を呆然と眺めた





チラリと鏡を見ると鏡も血塗れになり
明が赤く見えた



ーーーわたくしには、赤がよく似合うと昴が言っていた




思い出し笑いをしながら、止血用の布を見れば
もう床の血を吸い役に立ちそうもなかった




ーーーあの鳥のように、外で死にたかった…








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