初恋
セミがうるさく鳴く。高校生のはるは身体中ビシャビシャになりながら今も額から絶え間なく汗が流れていた。
気温は30度超の真夏日。帽子に半袖半ズボンの、はるは、強い紫外線と、ジリジリとした蒸し暑さに耐えながら家からバスで軽く30分は、かかる有名な大学病院に来ていた。
最近改築した新しい病院は病院と言うより、どこかのオフィスビルにも見える。入口の自動ドアから、冷たい冷気がはるの汗ばんだ肌を静かに撫でて冷やした。強い紫外線から逃げるように病院に入ると、案の定たくさんの人がソファーに座っていた。はるは、なれない寒さに肌をふるわせながら、受付をし、受付からかなり離れた奥の1席に、座った。
「あれ…?会長!?」
突然呼ばれてビクッとしてしまった。
「照嶋君、静かに、ここ、学校じゃなくて病院」
そこには照嶋暁が、子犬みたいな笑顔で私を見つめていた。
「ごめんなさい。だって、なんか変わった髪色の子いるなって思ったら会長で…ビックリしましたよ!!で、なんで会長がここに?」
色素の薄い髪はどこにいても目立ってしまう。
「え?えーとなんでって言われても…最近喉の調子悪くて、風邪かなと思って…。で、照嶋君は?」
下手くそな嘘で聞き返すと照嶋は、笑顔で、
「ばあちゃんのお見舞いです。うちのばあちゃんせっかちで、自分でなんでもしようとするんですよ。そしたら前、ばあちゃん、家でずっこけちゃって、で、病院入院。って感じです。」
そんなに細かく聞いてないけどと、思いながらも、「ふーん」とだけ返した。
しばらく沈黙が続いたあと。
「嘘ですよね…喉の調子が悪い人、あんな大声出せませんよ。」
突然の言葉に背筋が氷った。
「え?何急に」
頑張って笑顔にした顔が引きつっているのが分かる。
「本当は?」
「ホントだよ?」
「嘘でしょ。」
はっきりと断言されて、逃げ場を封じられた。
「それはそうと、おばあちゃんのお見舞いは?」
どうにか逃げ出そうと、必死に逃げ道を探した。
「まだ早いんだ。もうちょい時間あるから」
その時、丁度、私が呼び出された。
「じゃあ、ごめんね。」
そう言って逃げるように立ち去った。
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