星降る夜はその腕の中で─「先生…私のこと、好きですか?」
 うるさいほど激しく鳴る胸を重ねた両手で押さえてきゅっと眼を瞑った時、


「苺のお菓子食べてたでしょ?学校にお菓子持ち込み禁止だよ、本来は」


と、先生が私のおでこを人差し指でつついた。


「へっ!?」


 驚いて眼を開けた私に先生は


「どうかした?」


と涼しい顔で訊いた。


「ど…どうもしないよ!」


 先生はふふっと笑って私から離れると、隣の椅子に座る。


「南条聞いてないからもっかいやり直し。あ、後ろに立った方が良かった?」


「え…」


 いや、いいです、とはなぜか言えなくて口籠ってしまう。

 あんなに頭の中が混乱するくらいドキドキしてしまったのに、実は嬉しかった私がいることに恥ずかしくなる。


「…ねぇ先生。もしかしてわざと…そういう言い方して、る?」


 私がドキドキするの分かっててわざと『良い匂いする』なんて言ってみせたとしか思えないよ。


 それに、昨日からの言動もなんか…


 私が先生の表情を窺いながら訊くと、先生は少し首を傾げる。

 そして…


「まぁな。だって少しは意識してもらわなきゃいけないからな」


「え…」


 どういう意味…!?


「ほら!もう一回説明するからそれ見せて」


 ますます混乱する私に対して、先生は至って普通に言う。


「それとも何?ホントに後ろに立たないとやる気でないの?」

「だっだだだ大丈夫ッ!!」


 先生が少し意地悪な笑顔でくすっと笑う。


 ねぇ、先生?

 今日の先生、いつもと違う…


 ねぇ、先生?

 何かあったの?


 私もう、胸が苦しくて壊れそうなくらいドキドキなんだけど…!?

       *   *   *
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