星降る夜はその腕の中で─「先生…私のこと、好きですか?」
 清瀬くんがクレーンゲームに向かい合う。
 クレーンとくまちゃんを見る清瀬くんの眼がとても真剣で、思わず「ふふっ」と笑ってしまう。


「あんま見んな。しくじる」

「清瀬くんだって見てたもん、私のこと」

「俺はいいの」


 清瀬くんは本当に2回で見事くまちゃんを取ってしまった。


「わぁ、凄い!」


 驚く私の眼の前にくまちゃんを掲げて、清瀬くんがちょっと高い声を出して言う。


「俺くまちゃん。よろしくね。
 俺舞奈とずーっと一緒にいたいなー。ねぇ、鞄に付けてよ?」

「あはは!いいよ。よろしくね、くまちゃん」


 私は清瀬くんからくまちゃんを受け取り、バッグに付けた。


「いいなー、お前。舞奈と一緒に居られて」

 清瀬くんが指でくまちゃんをぱちんと弾く。

「くまちゃんを苛めないで」

「へーへー。くっそ、俺もくまになりたいわ」


 それから私たちはプリのブースに入る。


(どうしよう。男の子と撮ることないからどうポーズしていいか分かんないよ…)

 揺花となら迷うことないのに…


「いつも通りでいいよ」


 清瀬くんが言う。

 でも私の顔を覗き込んで、綺麗な顔で微笑むから余計表情が固くなる。


「あ、俺のこと好きになっちゃった?」

「!
 なりません!」


 私が頬を膨らますと清瀬くんはまたそれをつつく。


「ほら、その顔してなよ。自然じゃないと良い顔出来ないっしょ?」


 そう言われてしまうともうホントにその通りで、私は思わず笑う。


「いいね。じゃそれで撮ろ?」


 私は揺花と撮る時みたいにポーズする。
 シャッターが1回、2回…


 最後のシャッターが切れる直前、清瀬くんの腕が私の肩に回る。


(えっ…!?)


 次の瞬間、こめかみ辺りに柔らかい感覚がした。

 パシャッとシャッターが切れる。


 清瀬くんを見上げると、


「約束通りキス頂きました」


と清瀬くんは悪びれもせず言った。


「きっ、清瀬くんのバカー!」


 キスプリを削除しようとするも

「いいよ、別に。俺が舞奈にキスした証拠がなくなればもっかいキスできるもんね」

なんて清瀬くんの口車に乗せられて結局キスプリをプリントしてしまった。

 そして清瀬くんはご満悦なわけなのだけど…
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