星降る夜はその腕の中で─「先生…私のこと、好きですか?」
1月~入試開始
 駆け抜けるように冬休みが終わり、3学期が始まった。 

 とは言え3年生は自由登校なので冬休みとあまり変わらないのだけれど、それでも確実に時は過ぎて刻々と入試が近付いていて、眼に見えるように緊張感は増している。


 夜璃子さんは緊急手術が行われ、まだ眠り続けている。

 始業式の翌日、私は先生に会いに学校に行った。
 やっぱり先生は元気がなく、口数も少なかった。

 放課後の英語準備室でふたり俯いて押し黙る。


「ごめんな、南条」

 先生が言った。

「俺のこと心配して来てくれたんだろ?
 俺は大丈夫だから、勉強に集中しな?」


 その笑顔はやっぱり力なく、余計心配になる。


「私こそごめんね…何の役にも立てなくて」

「そんなことないよ」


 先生は椅子から立ち上がって私の傍らに歩み寄ると、私の頭に掌を乗せた。


「あの時南条が居てくれて、『私がついてる』と言ってくれて、俺は本当に助かったんだ。じゃなかったらもっと取り乱してたと思う」

 先生が腰を屈めて私を覗き込む。柔らかな眼差しは悲しげだったけれど、でもそこに嘘はなく見えた。


「今俺に出来ることは夜璃子の生きる力を信じて待つことしかないんだ。じたばたしてもしょうがない。

 早くそれに気付けたのは南条が居てくれたからだと思ってるよ」

「先生…」

「だから南条はもう勉強に集中して。春から夜璃子と同じ学校に通うんだろ?」

「うん…」

「また何かあったら連絡するから」


 先生に促されて準備室を出る。

 私がいなくなった後、ひとりの部屋で先生はどうするんだろう。どんなにか不安で、なのに何も出来ない自分に苦しんでいるんじゃないかと気掛かりになる。


 でも私に出来ることもただひとつで。


(夜璃子さんと一緒の学校に行きたい…!)

 夜璃子さんの回復を祈って外大に合格すること、それしかないんだ…

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