星降る夜はその腕の中で─「先生…私のこと、好きですか?」
 しばらく間があって、ようやく先生がゆっくりと口を開いた。


「夜璃子が…」

「え、夜璃子さん?」

「…死ぬかもしれない」

「え、えぇっ!?」


 夜璃子さんが死ぬかもしれない…?

 突然の言葉に頭の中が真っ白になる。


(どういうこと…?)


「心臓の病気で急に倒れて、病院に運ばれたらしい。今昏睡状態で、助かるか分からないって」

「あ…」


『ごめんね、私持病があって、その時体調がどうか分からないんだ』

 夜璃子さんからの手紙に書いてあった。

 夜璃子さんの持病って心臓の病気だったんだ。それも、そんな重いなんて…


「俺…アイツがそんな病気だなんて知らなかった…」

「……」


『持病の件は昴には黙ってて。
あいつ、心配症なとこあるから面倒』

 夜璃子さん、そう言ってた…


「俺は…アイツの為にしてやれること、何もないんだろうか…」

 先生は崩れ落ちるように床に膝を突いた。


「先生!」

 慌てて駆け寄り、先生に寄り添う。

「何も…何も出来ないんだ、俺は」


 夜璃子さんがいなくなるなんて…


『昴が兄なら、私のことも姉だと思って、何でも頼ってくれて良いです』


(絶対やだよ…!)


「先生…」

 頭を抱え項垂れる先生に抱きついた。


「アイツが死んだら…どうしたらいい…?」


「先生…私が…私がついてるよ!」


 栗色の髪を掻き抱くように先生を胸に抱き締める。
 腕に目一杯力をこめて、強く、強く…

 それでもそんなことしか言えない自分がどうしようもなく歯痒い。


(神様、夜璃子さんを助けてください。

 先生の為にもどうか、どうかお願いします…)


 何も出来ないのはよっぽど私の方…

 でも、ただただ夜璃子さんの無事をひたすら祈る。

 今の私には、そんなことしか出来ないから─

        *   *   *
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