星降る夜はその腕の中で─「先生…私のこと、好きですか?」
「南条!」
職員室を出て教室に戻る途中のエントランスホールで、後ろから仁科先生に呼び止められた。
(なんだろう?)
仁科先生に呼ばれる覚えなんてまるでないのだけど。
足を止めると、仁科先生は辺りを憚るように見回す。既に授業の始まっているホールには誰もいない。それを確認すると仁科先生は声を潜めて話し出した。
「『アイツ』から何も聞いてないんだろう?」
「!」
『アイツ』が誰かなんて訊かなくても分かった。
先生と仁科先生は仲が良いから何か聞いてるんだ、きっと。
仁科先生の次の言葉を待ちながら、胸の拍動はドキドキと早まっていく。
「俺が出しゃばる話でもないんだけどさ、アイツ何も言わなかっただろうから誤解のないように言っとくけど、決してアイツの個人的な感情で『こんなこと』になったわけじゃないんだ。
分かるよな?俺らには所謂『大人の事情』でやむを得ないことってのがあるって」
「!?
もしかして…何か、あったんですか?」
「…何もない、って言ったら嘘になるな。
ただ、お前に余計な心配掛けたくなくて敢えて何も言わなかったんだろうから、今はただ受け入れて、アイツのこと信じて待ってて貰えないだろうか?」
「先生、まさか…辞めちゃうの…?」
「いや、まだそんな話にはなってな…」
「だったら私も一緒に学校辞める!」
「っ!ちょ、待て!
だからそれ。お前がそう言うこと言うの見越してアイツ何も言わなかったんじゃない?
自分の気持ちを裏切ってでも守りたいもの、守りたいヤツの為に振り切ったアイツの気持ち、汲んでやって?」
「!……」