星降る夜はその腕の中で─「先生…私のこと、好きですか?」
 3月。

 校門からのアプローチに並ぶプランターにはまだ固いチューリップの蕾が春を心待ちに背伸びするようにして並んでいる。


 今日は卒業式。


「舞奈」

 教室に入るとすぐに揺花に声を掛けられた。


「舞奈、外大受かったって?」

「揺花も合格おめでとう」

「うん…でも寂しくなるな、舞奈が東京行っちゃうと」


 揺花は私同様地元国大の受験を控えているけれど、既にこっちの私立大学に合格していていずれにしても地元での進学が決まっている。


「そんなことないかもよ。国大落ちて春から浪人してるかも。あ、なんなら来年国大で揺花と先輩後輩になってるかも」

「嫌ーッ!そんなこと言わないで!頑張って東京行って!!」

 揺花が私の両手を取りぶんぶんと振った。

「とにかく来週の入試頑張ろ!一緒に」

「ん、そうだね」


 久しぶりに会えた揺花とお喋りに花を咲かせていると、やがてチャイムが鳴った。
 席に座ると直ぐに担任の村田がブラックフォーマル姿で教室に現れた。

「卒業おめでとうございます。では今日のスケジュールと春休み期間中の注意事項等を連絡する」


 頬杖を突いて窓の外に眼を遣る。

 外はまだ浅い春の風。
 思えばもう駅のコンコースで先生と出逢ったあの時から1年が経とうとしている。早かった、でもいろんなことがあった1年。
 出逢って、恋をして、悩んで落ち込んで、想いが通じ合って、離れて、また愛し合って。
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