次期社長と訳あり偽装恋愛
「そうなんですね。そんなことよりさっき立花さんを見かけたんですよ!」
友田さんは特に怪しむ様子もなく私の言葉をスルーし、嬉しそうに話す。
逆に私はさっきまで見ていた名刺の人物の名前を言われ、ドキッとした。
「立花さんていいですよね。カッコいいし御曹司だし仕事も出来るし。絶対に彼女がいると思っていたけどフリーみたいなんですよね。私も彼氏がいなかったらアタックしてたかも」
ふふ、と楽しそうに笑う。
「でも、立花さんは誰が誘っても断られるって話なんですよ。そういえばこの前、金城さんが告白して振られたらしいです」
友田さんの口から金城さんの名前を聞き、あの時のことを思い出す。
「でも、さすが金城さんですよ。変わり身が早くて、今度は経理部の岩佐主任に声をかけているみたいなんです」
「へぇ、そうなんだ」
経理部の岩佐主任も確かにカッコいい。
独身でクールなインテリ眼鏡のイケメンだ。
金城さんのアグレッシブさには感心する。
それにしても、友田さんの情報網は半端ない。
どこからそんな情報が流れてくるんだろう。
怖くなってくる。
「あの難攻不落な立花さんをゲットする女性はどんな人なんだろう。梨音先輩も気になりません?」
「そ、そうだね」
そんな話を私に振ってこないで欲しい。
友田さんは無邪気に聞いてくるので返答に困る。