次期社長と訳あり偽装恋愛
彼女連れの男の人が睨むように私を見て舌打ちした。
また何か言われるんじゃないかという緊張感に襲われる。
「ちょっと!謝ってくれたんだからいいでしょ。早く行こう」
彼女が宥めるように言うと、そのカップルは再び歩き出した。
こ、怖かった……。
でもトラブルにならなくて本当によかったと安堵の息をはく。
人にぶつからないように周りを気にしながら歩いていたら、ドーンという音が耳に届いた。
花火が上がったんだ。
この人混みの中ではゆっくりと花火を見ることは出来ない。
私、何をやっているんだろう。
クレープなんて食べたいとか言わなければよかった。
そしたら立花さんとはぐれることはなかったのに……。
後悔先に立たず、情けなさや心細さで子供じゃないのに涙が出そうになる。
「河野さん!」
いきなり背後から腕を掴まれた。
聞こえた声に振り返ると、ずっと探していた人が汗だくて息を切らしていた。
「よかった、見つかって」
立花さんは私の身体を引き寄せ抱きしめてきた。
私は会えてホッとしたせいか、涙がこぼれ落ちた。
「ごめん、一人にして」
私の涙を優しく拭ってくれ、もう大丈夫だというように背中をポンポンと叩いてくれる。
「ここは通行の邪魔になるから移動しようか」
そうだ、ここは屋台がひしめいていて人の往来がある。
「またはぐれたら困るから」
立花さんは私の手を繋ぎ歩き出した。