次期社長と訳あり偽装恋愛

「いや、俺はいいよ。じゃあ、俺は焼きそばを買いに行くから河野さんはクレープを買っておいで。買ったらあそこのテントで待ち合わせしよう」

数メートル先にあるテントを指差す。
そのテントの下には長テーブルとパイプ椅子があり、そこで買った物を食べたりすることが出来る。

「分かりました」

私はクレープの列に並んで自分の番がくるのを待ち、頼んだクレープを受け取った。
思ったより時間がかかり、少し焦りながら待ち合わせ場所のテントに向かって歩く。

あれ?立花さんがいない。
私の方が早かったのかな。
パイプ椅子は全部埋まっていて座れないので、テントの隅で立花さんを待つ。

しばらく経っても立花さんの姿が見当たらない。
もしかしてまだ焼そばを買えてないのかな。
連絡してみようとバッグを漁っていたら、スマホがないことに気づいた。

どうしよう。
連絡も取れないし、立花さんもいない。
焦りが不安に変わっていく。
急に心細くなり、冷静な判断が出来なくなった私はその場を離れ人混みの中をかき分けるように歩き出した。

花火が始まる時間が近づき、人も増えていく。
まずは焼きそばの屋台に行くことにした。

足早に歩きながらキョロキョロ辺りを見回していたら、反対側から歩いてきた人と腕がぶつかって立ち止まった。

「いてぇなぁ」

「すみません」

ぶつけた腕を触り、頭を下げて謝罪した。
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