血だらけペガサス


今まで忘れていた……あの少女の姿を。

その心の中でいつまでも踊っている少女の姿を思い出して、

自分が、仲良し学級という場所にこんなにも意識を向け続けているのだということに驚いた。

その時だった。

誰かのスマホから
とつぜん警告音が聞こえてきた。
緊急速報の音。

「今ごろかよ」

と、誰かが言った。

いや、違う。と倫太郎は直感じた。
これは緊急地震速報じゃない……外ではもっと重篤な事態が起こっているだ。

と、彼は本能的に怯えた。

心の底から不気味な叫び声が聞こえるような嫌な気分になった。

きっとこれも虫の知らせ、
倫太郎がもつ、能力の一つだった。

「違う! 地震速報じゃない! 別の災害だ!」

倫太郎は叫んだ。
学年全体と、そして先生たちに向かって叫んだ。


日常では感じる事のできない不気味な現象というものが、今……外で起きているんだということに気づいてもらいたかった。

でも、その必要は無かった。


数個のきな臭い緊急速報の音も止み、しん、と静まり返った体育館の……その場にいる生徒と教員たちは、群れを成した魚のように、一様に、窓の外を眺めていた。


階段を上がったところの大窓には、
ふつうカーテンが掛けられているのだが、
今日はイレギュラーな集会なので
外の様子がよく分かった。


カラスの大群がボトボトとぶつかってきて、
苦しそうにカアカア鳴いていた。

それを見た生徒たちの喚き声が聞こえる。
恐怖する声が聞こえる。

いきなり窓ガラスがガシャンと割れた。
もちろん一枚だけではなく全部である。

その音は酷かった。

破片が飛び散るこの鋭い音は、それまでの雑踏をかっさらって、また再び静寂を運んできた。

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