御曹司様の求愛から逃れられません!
「そういえばさぁ」

そんなとき、亮太さんがポツリと呟いた。
ふたつのテーブルのメンバーをぐるりと見渡した後に、彼は私と絢人さんをじっと見る。皆、突然話し出した亮太さんに注目した。

「ずっと変だとは思ってたけど、俺気づいちゃった。さっきのムービーのさ、マナっちゃんのメッセージのところ。後ろに夜景写り込んでたじゃん?あれさ、絢人の自宅だろ。……お前ら、本当は付き合ってんのか?」

ピキン、と体が硬直し、何も言葉が出てこなくなった。そんなことを今言われるなんてまったく予想していなかった。周囲も同じく数秒静まり返ったあとで、「え!?」と皆の驚きの声が揃う。

「えっ、いえ、そのっ……」

もう、亮太さん、なんてこと言うのっ!?

付き合っている事実はないけど、あれは確かに絢人さんの自宅だ。しかも、私たちは何度かあそこで良からぬことをした仲である。
その夜のことを思い出し、たちまち顔が熱くなった。

「あ!真夏赤くなった!」

指摘されるともう顔すら上げられない。先輩方、そんなにいっぱい詰め寄ってこないで……!
目を泳がせて口をパクパクさせるしかなく、私はバックやら引き出物の紙袋やらを膝の上にギュッ抱き込んで小さくなった。

絢人さんが椅子を引いた音がした。彼が立ち上がると意味もなく「キャー!」と歓声が上がったが、彼こそ質問には何も答えない。
彼は荷物を持って私の椅子の背もたれに手をかけると、「真夏」と名前を呼んだ。
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