御曹司様の求愛から逃れられません!
少しだけ体を離して、絢人さんは額と額をくっつけた。私も見つめ合ったまま微笑んでみせる。

「私も絢人さんが好きです。ずっと気付かないふりをしていてごめんなさい。……絢人さんはもう手の届かない人だからって思うと、怖かったんです。どうしても、自分に自信が持てなかった」

「……真夏らしいな」

「絢人さんは心配じゃないんですか?……私が恋人になって、本当に大丈夫なのか」

「全然。俺は跡継ぎとして結婚なんかしなくても、信頼や人脈なんていくらでも作っていける。大丈夫、自信がある。でも、真夏を諦めたら、もう二度と手に入らない。俺が手に入れたいのは真夏だけなんだ」

胸の奥がツンと痛み、涙がじわりと溢れてくる。嬉しくて、私は“キスして”と目を閉じた。

「真夏……」

王子様のように顎を持ち上げられた後、ドラマチックなキスが降り注ぐ。
不安のない素直な気持ちで彼とキスをするのは初めてだった。以前より何倍も、気持ちよくて幸せを感じる。

“大好き”という気持ちが溢れだしたキスはどんどん深く激しくなっていく。その最中、唐突に、絢人さんは唇を繋げたまま私の体を持ち上げた。

「わっ……!」

すると唇が離れ、私の体が宙に浮いた。絢人さんが私の腰を持ち上げて、彼の背より高いところまで抱き上げていく。
思わず彼の肩に手を置いて落ちないように体を支えるが、絢人さんはより高く、高く、私を持ち上げていった。

「きゃっ、絢人さんっ、ちょっと」

「ははっ、可愛い、真夏。軽くて飛んで行っちまいそうだな」

いたずらで幸せそうな笑顔をこぼされ、私も自然に笑顔になった。

「もう、飛べるわけないですよっ」

絢人さんの頭にきゅっと抱きつく。
私はもう二度と、離れていきませんから……!嫌になるくらい、ずっとこうして絢人さんにくっついていますからね!
< 128 / 142 >

この作品をシェア

pagetop