御曹司様の求愛から逃れられません!
部屋へ向かいながら、樫木さんはぶつぶつと何か言ってきた。
「僕とふたりで飲んだなんて、志岐本部長に言っちゃダメですよ」
「んん……どうしてです?」
「……もしかしたらあの人は、貴女に本気なのかもしれません。志岐本部長のものに手を出したなんて誤解をされたくないんですよ」
「ふふ……」
「……何が可笑しいんです?」
びくともしない腕に掴まりながら、私は自嘲気味に笑った。
だって笑っちゃうでしょ、そんなの。絢人さんが私に本気だなんて、樫木さんまで何を可笑しなこと言い出すんだか。
「……私は浮気相手にはなれません」
「浮気相手?」
婚約者のいる絢人さんの二番目になるなんてごめんだ。……寂しくなるし、絶対、一番になりたくなる。キスだけであんなに体が痺れたけど、あれは二番目のキスだったのかと思うと、今は胸が張り裂けそうになるのだ。
……こんなことを思うなんて、私、やっぱり絢人さんのこと……。
「あの、園川さん。浮気相手とは何のことです?僕が言ったのは、あなたが志岐本部長の本命という意味だったのですが」
「だってどうしたって本命にはなれないじゃないですか……。絢人さん、婚約者いるんでしょう?」
「婚約者?それって、玲奈(れいな)さんのことですか?……あの、園川さん、それどこで聞いたんです?」
「……ふうん、玲奈さんって言うんですね……」
名前を知ると余計に苦しくなって、声が震えた。勘違いじゃなかった……。やっぱり、あの人は婚約者で間違いないんだ。
手の震えが止まらなくて、樫木さんの腕にしがみついた。
「僕とふたりで飲んだなんて、志岐本部長に言っちゃダメですよ」
「んん……どうしてです?」
「……もしかしたらあの人は、貴女に本気なのかもしれません。志岐本部長のものに手を出したなんて誤解をされたくないんですよ」
「ふふ……」
「……何が可笑しいんです?」
びくともしない腕に掴まりながら、私は自嘲気味に笑った。
だって笑っちゃうでしょ、そんなの。絢人さんが私に本気だなんて、樫木さんまで何を可笑しなこと言い出すんだか。
「……私は浮気相手にはなれません」
「浮気相手?」
婚約者のいる絢人さんの二番目になるなんてごめんだ。……寂しくなるし、絶対、一番になりたくなる。キスだけであんなに体が痺れたけど、あれは二番目のキスだったのかと思うと、今は胸が張り裂けそうになるのだ。
……こんなことを思うなんて、私、やっぱり絢人さんのこと……。
「あの、園川さん。浮気相手とは何のことです?僕が言ったのは、あなたが志岐本部長の本命という意味だったのですが」
「だってどうしたって本命にはなれないじゃないですか……。絢人さん、婚約者いるんでしょう?」
「婚約者?それって、玲奈(れいな)さんのことですか?……あの、園川さん、それどこで聞いたんです?」
「……ふうん、玲奈さんって言うんですね……」
名前を知ると余計に苦しくなって、声が震えた。勘違いじゃなかった……。やっぱり、あの人は婚約者で間違いないんだ。
手の震えが止まらなくて、樫木さんの腕にしがみついた。