御曹司様の求愛から逃れられません!
「……玲奈さん。話してくださって、ありがとうございます」

小さく呟いてから、答えを出さずにグラタンを食べることを再開させた。玲奈さんはじっと私を見つめたままだ。

彼女の話で、絢人さんの気持ちは十分伝わった。でも彼の想いを受け止めることで彼が幸せになれるのか、それは別の問題なのだ。
むしろ、二番目だと割りきっていたときよりプレッシャーは大きくなった気がする。

「真夏さん」

彼女は煮え切らない私を叱るように名前を呼んだ。そりゃあ、玲奈さんは考えたこともないだろう、自分が相手と釣り合うかどうかなんて。そのせいで未来を恐れる気持ちは、きっと分からないはずだ。

「……ごめんなさい。あとは、私自身の問題なんだと思います」

それだけ答えると、彼女は不満そうにしつつも頷いてくれた。誰に何を言われても、私しか答えが出せない。

絢人さんの気持ちははっきりしているのに、私だけがはっきりしないまま。彼のことが好きすぎて、これからが漠然と不安なのだ。
はっきりさせることが、今はすごく怖い。
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