意地悪な佐伯くんが甘くなる。
…え?
今、『好き』って聞こえたような…。
「ねえ、冗談でしょ?」
「俺、こんな真剣に話してるのに、それでも冗談にしちゃうの?」
…距離が、とても近い。
顔が、熱くなる。
「だって好きって感じ全くなかったもん…。」
「…好きだから意地悪したくなる、男ってそんなもんだよ。」
「…っ、私には、わかんないよ。」
「じゃあ分かるように言ってあげる。」
そう言うと、佐伯くんは私の手を握る。
…私より大きくてしっかりした手。
私、もっとドキドキしちゃってる。
「先輩の優しさも、笑顔も、俺が意地悪した時の怒った顔も、ムキになっちゃうところも、部のために努力してくれてるところも、全部好き。」
「…っ!」
「好きすぎて、俺、先輩しか見えてないよ。」