【甘すぎ危険】エリート外科医と極上ふたり暮らし

そう言いながら真澄さんは、わたしの乱れた髪を整えるように梳き、髪を一房掬うと、それにそっと唇を寄せた。男性に向けて思うことではないのかもしれないけれど、その仕草があまりにも艶かしくて、うっとり見惚れてしまう。

そんな自分が恥ずかしい。

「で、できた女性かどうかはわからないけれど、真澄さんのことは前よりわかってきました」

伏し目がちに言葉を呟く。と、真澄さんがわたしの顎を、長い指で軽く持ち上げた。

「そうか。ならもっと俺のことをわからせてやる」

ニヤリの口の端を上げて笑みを浮かべるその顔は、さっきまでの艶かしさはどこにもない。

往々にして自信家ならではの仕草で真澄さんらしいと言えばそうなのだが、なぜ今ここでそのキャラが現れるのだろう。わたし何か、地雷でも踏んだ?

これって、まさか──嫌な予感しかしない。これはヤバい展開なんじゃないだろうか。

危険信号を察知した脳は素早く命令を出し、私は慌てて真澄さんの胸に手を押し当てた。

「ダメです! 無理……というか、真澄さんのことは徐々にわかればいいのでは」
「でも俺といると楽しいんだろ?」
「そ、それはそうですけど」

もう。何を言えばわかってくれるのというの。


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