【甘すぎ危険】エリート外科医と極上ふたり暮らし
「ちょ、ちょっと待って。何もそんなに先を急がなくても。有給休暇のことはなんとかするから、一度愛川先生と話してみたら? 彼にもいろいろな事情があるのよ。田舎に帰るとか仕事を辞めるとか、そんな大事なことをあなたひとりで決めてしまっていいの?」
園枝さんにそう言われ、気持ちが揺らぐ。
いろいろな事情って何? そんなこと、わたしはなんにも知らない。
もちろん、今自分がしようと思っていることが正しいとは思っていない。真澄さんと話をする選択肢がないわけじゃない。わたしの行動が早急すぎることもわかっていた。
まだ心の最奥で、真澄さんのことを信じようとしているわたしがいる。
真澄さんの本当の気持ちを確かめたい──。
『ずっと好きだった』と言ってくれた、あの告白は嘘だったの? 『蘭子が欲しい。蘭子じゃなきゃダメなんだ』と力強く抱きしめてくれたのは偽りだったの?
真澄さんのひとつひとつの言葉が、頭の中を走馬灯のように駆け巡る。
なんて、今さらか……。
「とにかく今は、ひとりで考えてみます。真澄さんに会っても、冷静ではいられないと思うし」
「そう、わかった。でも何か相談したいことができたら、すぐに連絡するのよ」
園枝さんの気持ちに感謝しつつ、翌日。わたしはひとり、生まれ故郷へと向かった。