【甘すぎ危険】エリート外科医と極上ふたり暮らし
幸せは自分で掴むもの


「う~ん、空気が美味しい」

岐阜の東濃地方にある小さな駅のホームに降り立つと、太陽に向かって背伸びをする。学生の頃と変わりない風景に、傷ついた心が少しだけふさがったような気がした。

バッグを肩にかけ直し改札を抜けると、駅前のロータリーにあるバス停に行く。

「次のバスは何時に……」

時刻表を確認していると、ロータリーに一台のバスが入ってきた。昨日のわたしは散々だったが、今日はツイてるみたいだ。

故郷の懐かしい景色は、カラッカラに乾いた心を癒やしてくれる。やっぱり田舎で暮らすのが、わたしには向いているみたいだ。

抜け殻……とまでは言わないけれど、今のわたしには何もない。心にぽっかり開いてしまった穴を埋めるには、やっぱり空気の綺麗なところがいいのかもしれない。

はあ~と息を吐き、目の前に停まったバスに乗り込んだ。

駅から自分が住んでいた街までは四十分ほど。子供の頃は長いと感じた道のりも、大人になるとあっという間でウトウトする暇もない。

窓からの眺めが見慣れたものになり、わたしが降りるバス停のアナウンスが流れた。“とまります”のボタンを押すと、おもむろに席を立った。




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