【甘すぎ危険】エリート外科医と極上ふたり暮らし
「待てって。話は最後まで聞け」

初めて聞く愛川先生の低い声に体がビクッと小さく震え、思わず足が止まる。

「離してください!」

あんなひどいことを言ったくせに待てなんて、よくそんなことが言えたものだ。掴まれている腕は痛いが、意地でも振り向くかと踏ん張った。

「高梨さんって案外、頑固なんだな」

ええ、ええ、頑固で結構。わたしは愛川先生のことが好きな女の子たちと違って従順でもなければ、可愛くもない。同じだと思っていたら大間違いだ。

「そう思うなら、私のことなんて放っといてください!」

大きく腕を振り愛川先生の手を払おうとするが、逆にその腕を引かれ彼の腕に抱かれてしまった。大きなバッグが足元にボフッと落ちる。

「放っとけない。それに……」

愛川先生は一度言葉を切り、わたしの頭を撫でる。その手を顔の輪郭をなぞるように滑らすと、柔らかく頬を包み込んだ。

「幸いなことに、俺は頑固な女性が好きだったりする」

耳元で囁かれた言葉は優しく、苦手な男性の胸に抱かれているというのに居心地がいい。

「愛川先生って物好きですね。だからって、この状態はどうかと思いますけど」

愛川先生の胸に両手を当て、その体をゆっくりと押し離した。

名残惜しい──何故かふとその言葉が頭をよぎり、この不思議な気持ちは何なんだろうと小首を傾げ愛川先生の顔を見上げる。



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