【甘すぎ危険】エリート外科医と極上ふたり暮らし
「そういうことだったら、何も隠すことなかったのに。怪我はなかったの?」

あるわけがない。アパートについたときには火事は収まっていて、呆然と立ち尽くしていただけなのだから。

それでも心配してくれる愛川先生に「おかげさまで」と返し、緊張してカラカラになっていた喉を潤すため、マグカップに残っていたコーヒーを飲み干した。

「ところで愛川先生。事情はお話したので、このことは内緒に……」
「できない」
「え? でもそれじゃあ約束が……」
「確かに話してくれたら願いを聞いてもいいとは言った。言ったけどそれは約束したわけじゃない」

なにそれ……。

愛川先生のひどい言葉に、頭の中が真っ白になる。

一ヶ月とは言え、わたしは住むところを失ったというのに、どうしてそんな非情なことが言えるのだろう。

ああ、わかった。面倒なことに巻き込んでくれるなと、そう言いたいわけだ。一瞬でも愛川先生のことを信用した自分に、情けなさから目に涙がにじんだ。

「愛川先生に話した私がバカでした。もう頼みません、すぐにここを出ていきます!」

興奮すると体内にアドレナリンが出て痛みも忘れると言うが、まさに今がその状態らしい。わたしはバッグを持ち上げると、臀部の痛みも感じず宿直室を出ようと歩き出す。

愛川先生がここまで非情な人だとは思わなかった!

涙がこぼれ落ちそうになるのを左腕で拭おうとして、上げたその腕をガシッと掴まれた。



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