【甘すぎ危険】エリート外科医と極上ふたり暮らし
「お昼、どこ行きますか?」
「そうね。今日は誰にも邪魔されずじっくり話を聞きたいから、外の喫茶店で」
病院の近所にはいくつかの喫茶店や軽食屋があり、病院スタッフや患者の憩いの場となっている。その中のひとつ『喫茶さつき』は、乙葉さんとわたしの馴染みの店だった。
あそこなら患者は多いけれど、病院スタッフの来店は少ない。コソコソと話していても、怪しまれることはないと思うけれど。
乙葉さんはわたしに腕組みして、ルンルンという言葉がピッタリな足取りで歩いている。反対にわたしの足取りは、ズンズンと重たい。
何をどうやって話そうか。きっと乙葉さんには誤魔化しが聞かない。だったら洗いざらい話して、他言無用と口止めしたほうが良さそうだ。
人間諦めが大事と溜息をつき、乙葉さんに引っ張られるように喫茶さつきへと向かった。
「おばちゃん、こんにちは」
乙葉さんが喫茶店のドアを開けると、カランコロンとちょっと古臭いが心癒されるベルの音がなる。
「あら~。乙葉ちゃんと蘭子ちゃん、いらっしゃい。いつものカウンターでいい?」
「ごめん、おばちゃん。今日はちょっと大事な話があるから、奥の席でもいいかな?」
そう言って乙葉さんがニヤッと笑うと、おばちゃんは何かを感じ取ったらしく、親指を立てて奥を指さした。