【甘すぎ危険】エリート外科医と極上ふたり暮らし
真澄さんのバカ! なんなのよ、一体。
エレベーターに駆け込み一階まで降りると、早足でロビーの奥の大きな窓へと向かう。そこは毎朝わたしが行く、心落ち着ける場所。早朝じゃないからまだ人は多くいるが、今はそんなことかまっていられない。
とにかくこの顔と体の火照りを冷まして、気持ちを落ちつかさなくちゃ。
周りを気にしながらいつもの場所に立つと、大きく深呼吸をした。早朝と違い冷たく澄んだ空気とはいかないが、ここから眺める景色は申し分ない。
こんな腹立たしい気持ちじゃなければ、もっと気分良くこの景色を楽しめたのに……。
いつまでたっても静まらない心に、ゆっくりと目を閉じる。頭の中を無にして何も考えない──そう思って目を閉じたのに、マスクを取った真澄さんの顔を浮かんできて、諦めるように肩を落とした。
やっぱりわたし、真澄さんのことが好きみたい。
白衣を着て治療をしている姿は、れっきとした口腔外科医で。心配するなと言われて安心できたのは、他の誰でもない真澄さんだったから。
彼の本当の姿に触れて彼の本心を知り、わたしの『もしかしたら』と思っていた気持ちは今、確信へと変わった。
「蘭子!」
と、その時。乙葉さんの声がして、その方向に振り向く。
「どうしたの? 口腔外科で何かあった?」
園枝さんに聞いたのか、乙葉さんは心配そうに私を見つめた。