【甘すぎ危険】エリート外科医と極上ふたり暮らし

「素直じゃないな。まあとにかく、蘭子は何も心配することない。俺を誰だと思ってる?」
「……口腔外科医」
「違う。優秀な口腔外科医だ」
「あ、はいはい。そうでしたね」

もう本気で相手するのも面倒くさい。

シューズを履き立ち上がると、ペコリと頭を下げた。

「まだ仕事中なので、この辺で失礼します」
「ああ、気をつけて戻れよ」

真澄さんはマスクを取って、わたしの頭をするりと撫でる。見慣れた顔なのに、ドキッと心臓が跳ねた。
誰か来たらどうするの!

そう思っていても、腹立たしい気持ちは半分。もう半分は……よくわかりません。

「い、いわれなくても、気をつけて戻りますよ。ここをどこだと思ってるんですか?」

よくわからない半分の気持ちを悟られないよう平常心で。

毎日来ている通い慣れた病院内だ。気をつけるも何もない。カゴの中にある小さな手提げを手にすると、今度は深々と頭を下げた。

「お忙しい時に予約もなしで診ていただき、ありがとうございました。このお礼は……」
「いらない」
「え?」

思いもよらぬ言葉に遮られ、黙ったまま真澄さんを見つめる。

「近いうちに、蘭子をもらうから」

顔を寄せ耳元で囁かれたのは、想像を遥かに超えた甘い声とセリフ。

その言葉に意味がわからないほど子供ではないわたしは、顔が熱くなったのに気づき、「失礼します」とその場から逃げるように診察室をあとにした。



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